Midnight Talk ~vol.21 浮気

 

「島耕作」(雑誌「モーニング」1983年連載開始)が、まだ課長だったときに、彼の上司(50代男性)だったと思うが、妻の浮気に気づくシーンがあった。その時、その上司が脳裏で呟くことが、やけに記憶に残っている。

「3ヶ月もセックスしてないなら、○○子が浮気するのも仕方ないか、、、」

それから、その上司は取り乱すこともなく、その夫婦の危機に冷静に対処していく、、と言う展開だったと思う。その冷静さがなんとも言えなかった。

私の奥様について語ることは、殆どないのだが、結婚10年目のころ、彼女にある事件が起きた。当時まだ、インターネットが珍しい時代に、新しい物好きな私の家には、すでにインフラがあって、当時、趨勢を誇っていたAと言うプロバイダーのお世話になっていた。家にパソコンは一台しかなく、私と彼女が共用していた。ちゃんとIDを分けて、メールもそれぞれ使っていて、互いにプライバシーを尊重してPasswordも別となっていて、私は彼女のPassは知らなかった。ただ、そのセキュリティ機能もサーバー上で閲覧する上で有効だったが、Localにダウンロードしたときは、誰からも丸見えになってしまう、、と言う穴があった。そんな穴のことなど、私も知らなかったが、ある日、意図せず、彼女のメールを読んでしまった。

どうやら、ネット上に、たまたま出身高校のフォーラムが立っていて、そこで、初恋の男性に再会してしまったようだった。

話しの上では、彼のことを知っていた。
当時、二人は全校注目のカップルだったらしいが、進学する彼女と就職を選んだ彼は、それを機会に別れてしまったようだった。高校生の恋らしく、観念的で自虐的な恋だったようだ。

メールは、日を追う事に盛り上がり、すでに「恋文」と言っていいものだった。それを読みながら、イケナイことをするときの、ドキドキしている自分がいた。
また、当時は私も若く、当然、嫉妬心などもあったし、普段、奔放な私を諫めるがごとくしていたマジメな彼女が、世に言う「不倫」(しかもダブル不倫) に進んでいこうとしているのが、許せないでいた。

しばらく、静観していると、二人とも会う算段を決めたようで、日時もハッキリ決まったようだった。会ったら、必ずセックスしそうな勢いだった。

彼女が私に言う「○月○日に同窓会があるんだけど、言っても良い?」私が用意していた答えは「あぁ、もちろんだよ。たまにはゆっくりしておいでよ」

なぜ、そのように答えたのだろう。日々ウキウキして、やけに私に優しい、幸せそうな彼女がいた。自分の悪行の数々を振り返ってみても、浮気準備をとがめるようなことを言う権利なんかない、と一瞬思った。私が、一言でも問いつめたら、マジメな彼女は、すぐにすべて白状して私に詫びることは分かっている。
自己嫌悪に陥り、自分を責めるタイプだ。そういう部分があまりにも脆いのは知っていた。

私が考えなくてはならないのは、彼女が自分の人生を納得して生きられるかどうかだ。ここで、旦那面して止めることはできるだろうが、きっと一生彼女は、心の底で悔いを残し、ゆくゆく私を恨むようになるかも知れない。なぜなら、このチャンスは、二度とないからだ。

会って話しだけで終わるかもしれないし、会ってすぐにホテルに行ってしまうかも知れない。いずれにしてもそれは、彼女が悔いのない選択をした結果だから、
それを支持しよう。どのような選択をするかは、彼女の自由だ。(今は、違う考えをしている。しかし、根拠は違えど、やっぱり支持する、、)

その前日の土曜日、「同窓会は、キャンセルになったって、、」と彼女がぽつりと言った。理由はそれらしいことを何か言ってたが、忘れてしまった。後から、分かったことだが、妻子持ちの彼の方からドタキャンしてきたようだった。「逢わない方がいい」と言うことらしい。

夕暮れのキッチンに佇む彼女の、肩が落ちた後ろ姿が侘びしかった。 「同窓会なんか、またあるさ。来週末は、たまには旅行しよっか」と声をかけた。彼女のほろ苦い物語の最終章だった。
(そういう落ちなら、最初から盛り上げるな、、と彼に対してちょっと怒っていた自分に驚いた)

 

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