KAMEYAMAⅠ~vol.8 どこでしたことある?

 

同い年くらいの女性が数人集まると、なぜか猥談に花が咲く。
男がいないから言いたい放題。その中で、「どんな場所でしたことがあるか」というのがよくテーマになる。

「私は玄関の靴脱ぎ場。やってきた彼にいきなり襲われて、そのまま……」

「マンションのベランダ。後ろから見えないようにしてたけど、向かいのマンションから見られていたかも」

「止めた車の中。コンコンと音がしたから彼とふたりで我に返ったら、警察官がいた」

よくもこれだけ出てくるものだと思うほど。 おとなしそうな顔をして、世間ではけっこうまじめな社会人で通っているはずの女性たちだって、これだけの経験をしているのだ。

「新幹線のトイレでしたことある。一緒に旅行したのだけど、お互いに京都まで持たずにもよおしちゃって。私が先に出たら、彼が中からかちゃっと鍵をかけたのよ。だけど並んでいた人がいてね、私が出たから開けようとしたのに開かないから『どうしたのかしら』って。
私はさっさと席まで戻ってきちゃった」

「深夜のドライブをしていたの。高速道路を彼が猛スピードで運転して、私はその彼にまたがってしちゃった。隣のトラックがすごい勢いでクラクションを鳴らしてたわ」

一歩間違っていたら死んでたよ。
よくも死なないで生還したねえ、とみんなが感心する。

「飛行機の中でしたことあるなあ。空いた国内線で、 隣の彼と横並びになって後ろから入れたの。 彼はジーンズからあそこだけ出して、私はスカートだったから下着だけおろして。 もちろんふたりの腰には毛布がかかってる。 動きたいけど動けない感じが楽しかった」

若いときは、とにかくセックスへの興味が尽きないのだと思う。
刺激を求めて意外な場所でしたわけではなく、盛りがついているからどこでもしてしまうのではないだろうか。
いつでもどこでも誰とでも、という時期があってもおかしくはない。

ところが年齢を経ると、自分の性欲のありようがわかってくる。同時に自制が効くようにもなる。盛りがついているのと、性欲が強いのとは違う。自分の性欲の強弱や満足のさせ方、なだめ方を人はだんだん知るようになっていくのではないだろうか。

 


著者:亀山早苗
明治大学文学部卒業後、フリーランスライターとして活動。夫婦間、恋人間のパートナーシップに関する著作多数。女性の立場から、男女間のこまやかなコミュニケーションのひとつとしてセックスを重要視する。 亀山早苗公式サイトはこちら・カフェ・ファタル

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