KAMEYAMAⅣ~vol.27 性幻想を話してみる

 

自分の性的幻想、あるいは性の原点というのを考えてみるとおもしろい。

「私の原点は、近所に住んでいる友だちのおにいさん。ラグビーをやっていたから、すごくいい体をしてたんです。その人の体に触れまくって、その人にまたがって悶えさせてみたい。中学生くらいのときからそう思ってました」
エミさん(30歳)は、そんな話をしてくれた。しかし、今、彼女がつきあっている同い年の彼は、女性を征服したいという幻想をもっている。

「だからつきあったばかりのころは、なんだか性的に合わないなあと思ってた。でもあるとき、私の原点を話してみたんですよ。そうしたら彼は彼で、じゃじゃ馬みたいな女性を自分の下でひぃひぃ言わせたいという幻想をもっていた。現実のセックスでは、お互いに相手に気を遣って遠慮しながらだったんだけど、その話をしてからは、それぞれが自分を出すようになりました」

ときどきエミさんは自分の原点に戻りたくなることがある。そんなときは彼の全身を愛撫しながら「今日は私がしてあげるね」と言う。そうすると彼は彼女の求めに応じてマグロのようにおとなしくなる。

「最初は愛撫されて感じてしまう自分が恥ずかしかったみたい。だけど、だんだん慣れてきて、今では素直に感じている表現をしてくれるようになった。私も同じ。征服される感じがすごく嫌だったんだけど、それはそれで楽しいと思えるようになってきた」

つきあって3年たつ今では、言葉にしなくてもお互い、スムーズに攻めたり攻められたりすることができている。原点を把握していれば、応用することも順応することもできるのかもしれない。

「性にまつわる思いって、たぶん、人それぞれ違う。まずは自分で把握することが大事ですよね。私も友だちによく『あなたの性の原点とか性幻想はなに?』と聞くんだけど、あまり考えたことがないという女性が多い。男性のほうがそういう話は共有できますね」

男性はみんな女性を征服したいという幻想をもっているわけではない。中には女性に優しくリードされたい人もいるし、強い言葉で攻められたがっている人もいる。何に感じ、どうされたいか、そしてどう表現したいかは個人差が大きい。

成人映画を観るときも、女性に自分を投影させて感じる男性は多いのだそうだ。感じている女性に、自分の中の女性性を合致させるのかもしれない。誰もが女性を組み伏せている状況に男として性感を刺激されるわけではないのだ。

だからこそ、エミさんが言うように、自分の幼い頃の記憶をたどって、最初に性的な衝撃を受けたのはどういう状況だったかを考えてみるとおもしろい。そのことが、相手とのセックスを、おそらくよりよりものへと進化させていくことになるはずだ。

 

 

 

 

 

 


著者:亀山早苗
明治大学文学部卒業後、フリーランスライターとして活動。夫婦間、恋人間のパートナーシップに関する著作多数。女性の立場から、男女間のこまやかなコミュニケーションのひとつとしてセックスを重要視する。 亀山早苗公式サイトはこちら・カフェ・ファタル

人はなぜ不倫をするのか 亀山早苗(著)

発売日: 2016/8/6
「人はなぜ不倫をするのか」。きっと少なくない人が、その答えを探している。本書はこの問いかけを第一線で活躍する8名の学者陣にぶつけた本だ。「ジェンダー研究」「昆虫学」「動物行動学」「宗教学」「心理学」「性科学」「行動遺伝学」「脳」。さまざまなジャンルの専門家が、それぞれの学問をベースに不倫を解説する。